旅も自転車もド素人なのに四国一周した話(11)
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2019/01/05【愛媛編PART5】松山をぐるりと沢山観光した話
坂の上の雲ミュージアム
この日は松山を観光した。
その名の通り、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』に関する資料が展示されている。
建物が現代的な建築であることも見どころの一つで、写真の階段は支柱を省いた空中階段として有名。
これは当時『坂の上の雲』が掲載されていた新聞のコラムの切り抜きを集め壁にしたもの。
残念ながら、それ以外は写真撮影が禁止だった。
展示の内容は作品の時代背景や、三人の主人公(正岡子規・秋山真之・秋山好古)の関係性、小説の名セリフなど、多岐に渡っている。
作品を知っていない人でも、興味をそそられるようなインパクトある展示が多かったので、松山に行った際は是非。
萬翠荘
次は同じ敷地内にある萬翠荘へ。
大正ロマン溢れる洋館で、明治にはこの地にあった建物に夏目漱石が下宿していたそう。
昭和には、昭和天皇もお泊りになったということらしい。
惜しいことに、改修工事を行っている最中で建物の全容を撮ることができなかった。
入口からして、既に美で満ちている。
これは部屋の様子。部屋ごとにデザインが違うのは当然かもしれないが、よく見ると暖炉も部屋によってデザインが違っていて、特注であることがわかる。
大街道(えひめ愛顔の観光物産館)
以上の2件を回った後は大街道を通るルートで松山市駅へと向かった。
下は現在と昔の比較。詳しくは前回の記事参照。
大街道に来たのは、えひめ愛顔の観光物産館に行きたかったからだ。
このお店では、蛇口から出るミカンジュースを楽しむことができる。それが目的だった。
子どもに混じって、蛇口から出るジュースに興奮するのは恥ずかしかったが、かなり面白い経験になった。
このときは動画を回していたので実際の写真はない。ただ、ホームページからどういうサービスなのかわかるので、リンクを載せておく。
坊ちゃん列車
先ほども言ったように、大街道を進むと松山市駅に到着する。
松山駅前には、道後温泉と肩を並べる超有名観光スポットがある。
それが坊っちゃん列車だ。
夏目漱石の小説『坊っちゃん』にて「マッチ箱のような汽車」として紹介され、主人公が実際に乗ったことから、この名が付いたという。
ここからは自転車と荷物を預け、徒歩観光だ。
乗り場で待っていると、坊っちゃん列車はやってきた。
どうやって方向転換するのかと見ていると、当時の軍服のような黒い制服を身にまとった車掌さん達が降りてきて運転室と客室(1両しかない)を切り離し、運転室の向きを180度回転させた。どうやら下に回転盤が付いているようだった。
客室は前後に連結部があるようで回転することはなかった。そのあとは順番に線路を切り替えドッキング、バックするようにこちらに向かってきた。
ちなみに、ここまで全て人力。
1車両、車内は20人ほど入るのがやっとという狭さ。
チケットは大人800円と運行距離にしては高めだが、松山市駅横にある観覧車の乗車券にもなっているようだ。
そして出発。
座席に伝わる振動こそ配慮されているが、車内にはけたたましい音が響き渡った。
運行中はスタッフの方が先ほど書いたような坊っちゃん列車にまつわるエピソードを話してくれた。
上りの坊っちゃん列車とすれ違い様に鳴らす汽笛の演出も粋だ。
乗ること20分。
終点の道後温泉駅に到着すると、もう一度切り離し・反転作業を見ることができる。
道後商店街(つぼや菓子舗)
そういうわけで、僕はまた道後にやってきた。
ただ、道後温泉に入るのはまだ後と決めていた。
道後温泉駅前にある商店街の中に進み、入ったのはつぼや菓子舗。
『坊っちゃん』に登場する団子屋のモデルになったお店で、坊っちゃん団子という商品をいただくことができる。
団子=餅という先入観があったのだが、ここの団子は餡を売りにした団子だった。
であるにもかかわらず、甘すぎず、かといって味が薄いわけでもない。
一言で言えば、非常に上品な甘さがある団子だ。
もちろん、抹茶もおいしかった。
第51番札所・石手寺
そのあとは少し歩いて、石手寺に向かった。
一枚目だけを見れば、ごく普通の寺院に見える。しかし、本当に度肝を抜かれたのだが、石手寺には摩訶不思議な世界が広がっていた。
少なくても、他の寺院には二枚目以降のような光景は見られなかった。
この表現が正しいかはわからないが、すごく個性的だと思う。
極めつけに現れる、地底マントラと呼ばれる洞窟。
参拝者は中を進むと、うす暗い中で地蔵や仏様と見えることができる。
一般的なトンネルのように一定間隔でライトがあるので安心。
この出入口は石手寺の外にあるのだが、先は石手寺の中に繋がっている。
他の方が言っていたのだが、奇妙なトンネルを抜けると奇妙な光景が広がっているなんて、まるで『千と千尋の神隠し』の世界だ。
子規記念博物館
このあとは道後のほうまで戻り、子規記念博物館に立ち寄った。
文字通り、正岡子規についての博物館だ。
恥ずかしながら、僕は今まで「正岡子規」というのは本名だと思っていたのだが、実は違うらしい。
「升(のぼる)」という名前だったのを改名したという。「子規」というのは元々ホトトギスの意で、正岡子規は結核による吐血を経験したのち、口が真っ赤なホトトギスになぞらえて名を改めたのだ。
ちなみに、以下は子規と夏目漱石が同居していたという愚陀仏庵の再現。
愚陀仏庵は本来、萬翠荘の横に建設されていたが、現在は土砂崩れによって倒壊してしまっているので、興味のある方はこちらをオススメする。
ぎやまんガラス美術館
道後商店街を抜けると、ぎやまんガラス美術館がある。
カフェや結婚式場と併設されている美術館で、入口からしてかなりおしゃれだ。
展示室はカフェの地下にあるため、受付はカフェで済ますことになっている。
肝心の展示内容はというと、様々な技術・時代背景のガラス。それをオシャレなライトアップとともに見ることができる。
道後温泉
この日だけで10近くの観光地を駆け足で回っているが、その最後に寄ったのは道後温泉だった。
神の湯・霊の湯の二種がそれぞれ2フロアにわかれており、浴場によって値段は変わってくる。
せっかく来たのだから最上級のところを選ぼうと思ったが、あいにく最も一般的な神の湯(階下)以外は満員で入浴することができなかった。
そのため、神の湯(階下)の感想になるが、良くも悪くも"昔の温泉"だった。
大浴場だが観光客が次々と入ってくるので、とにかく窮屈なのだ。歴史を感じるために入るのであれば十分すぎるが、温泉としての利用なら他の浴場をお勧めする。
2019/01/06【愛媛編PART6】遺跡の島とタオルの話
朝の7時頃、まだ辺りが真っ暗なうちから出発した。
松山から今治までは苦労する道もなく、自動車の少ない時間帯だということもあってスムーズに進むことができ、9時前には今治駅に着いた。
とはいえ、約45キロもノンストップで走り続けたので、さすがに疲れていた。
駅前で休憩を取っていると、またまたまたまた、おじさんが話しかけてきた。
もうこのケースは何度も経験しているので、コミュ障の僕と言えど、普通に盛り上がることができた。
おじさんの話によると、今治には小島という、船で行く観光スポットがあるという。
出航時間を調べると、ちょうど次の便に間に合う時間だったので、僕はすぐさま港に向かうことにした。
小島
小島へはこの小さな船に乗っていくらしい。
香川に来るときは船の乗り方さえイマイチわからなかったが、もう慣れたものだった。港にはしゃいでいた自分が嘘のようだ。
ちなみに、この船に乗ると来島海峡大橋を横から撮影できる。
10分ほど乗っていると、小島に到着。
僕以外の乗客はみな釣りに行くようだった。
いきなり出迎えてくれるのは砲台。
小島とは、日露戦争時代に築かれた芸予要塞がそのまま遺跡として残っている島なのだ。
とりあえず、船着き場にあった看板記載の観光ルートに沿って島を巡ることにした。
最初の遺跡は草木をかき分けると現れた。
階下の部分に入ると、中は空洞になっていた。
階段を上がってみた。
探照灯台として使われていたらしいが、どう使われていたのだろうか。
次は発電所跡。当然、現在は発電設備はなく、中はもぬけの殻だ。
島にいくつかある砲台跡の一つ。
砲座跡は円形に広がっていて、船着き場で見たような砲台が置けそうだった。……当たり前だが。
弾薬庫跡は全ての砲台から見て、程よい距離にあったのを覚えている。
二つ目の砲台跡。
先ほどよりも砲台を設置していたことがわかりやすかった。
このレンガ造りの建物は兵士たちの寮だったようだ。
将校たちの部屋は少し広く造られていた。
寮の横の階段を上っていくと、指令塔跡があった。
ここから見える景色は綺麗だ。
一通り見て回ると、船着き場に戻った。
可愛い先客が二匹。 耳カットがなかったので完全なノラだと思うが、すごく人慣れした猫だった。
第55番札所・南光坊
小島から戻ると、再び今治駅を目指した。
その途中で立ち寄ったのは南光坊だ。
境内には川村驥山の筆塚がある。
僕はブログですら「ひぃひぃ」言いながら書いている状態なので、文才をあやかれるように参拝してきた。
タオル美術館
タオル美術館へ行くためだ。
旅の進行方向にあるため自転車で行っても良かったのだが、既に今治駅付近のホテルを予約しており、日没までに引き返すことができるか自信がなかった。
それに、タオル美術館は例の如く丘の上にある。残りの体力的に坂道は結局歩くことになるだろうとわかっていた。
だとしたら、自転車より電車のほうが利口だ。……という甘えだった。
最寄駅・伊予三芳駅からタオル美術館までは片道4キロほど歩かなくてはならない。
坂道はそのうち1キロほどだったが、朝から5~60キロ走って島一周している身には辛いものだった。
おまけに歩道はなく路側帯も狭い道路で、すれすれを走る自動車がストレスに拍車をかけた。
そうして現れたタオル美術館はまたしてもレンガ造りだった。
受付前には楽しい展示物が。
ちなみに、これから紹介するものはほぼ全てタオルで出来ている。
入場すると、まずタオルができるまでの製造過程を見ることができる。
機械の展示ではなく、実際に稼働しているのがポイント。
製造過程を学んだ後は常設のムーミン展が始まる。
オシャレなウォールアート。もちろんタオル。
実物大(?)の彼らは、照明が暗いせいで影が差していてちょっと怖かった。もちろんタオル。
一応補足しておくと、このムーミンハウスももちろんタオル。
人形の展示が終わると、明るい部屋に突入する。
これはタオルじゃない。
これはもちろんタオル。
この部屋は原作のシーンをタオルで再現した展示が多くなされている。
と、こういう感じだった。
実はこの後に企画展があるのだが、 そちらは撮影禁止ということで写真はない。
その都度の企画展の内容はホームページから参照できる。
帰りは日が落ちていたのでタクシーを拾った。
細い路側帯を歩いて、車に引っ掛けられでもしたら洒落にならない。……という言い訳だった。
例の如く、一時間に一本というダイヤの電車を待ち、今治駅に戻った頃にはすっかり夜になっていた。
ホテルポートサイド今治
この日の宿はこちら、ホテルポートサイド今治。
自転車に悪戯をされた日以降、極力ロビーに自転車を置かせてくれるところを探すようにしていた。
こちらのホテルは自転車を部屋に持ち込むこともできる。
言い換えれば、部屋がかなり広いということだ。
それでいて、値段は抑えめ&朝食に無料の軽食付き&遅めの11時チェックアウト。
しかも、接客がかなり良かった。
もちろん、接客なんて個の従業員次第だ。だから、あくまで僕の経験談だが、このときのフロントの方は顔を合わせるたび、深々と頭を下げてくれた。
それは深夜でも早朝でも変わらなかった。
サービス業で「お客様は神様」とはよく言うが、高額を支払っているならともかく、低価格で神様の地位を買えるホテルはここだけだろう。
少なくても僕の知っているホテルの中では。
(続く)