旅も自転車もド素人なのに四国一周した話(5)
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2018/12/24 【徳島編PART4】日本の渚100選・大浜海岸に行った話
ついに旅を始めて二週間目に突入した。
一週間かけて大阪から徳島までしか進んでいない。
いくらマイペースの僕でも、この事実に焦りを感じ始めていた。
心当たりはありすぎた。香川に上陸するのに二日かかったこと、さらに三日目を観光と例のトラウマ山で潰したこと、徳島に着いてからは四国遍路に夢中で全体的に進度が悪かったこと。
いい加減、前に進むことを第一に考えなくてはならない。
この中で、これから改善できるのは四国遍路への向き合い方だけだった。
というわけで、ここからの四国遍路はあくまで目的地への途中で立ち寄れる寺院にのみ寄ることにした。
一応補足しておくと、四国遍路では一度の旅で全ての寺院を巡る必要はないとされている。
当面の目標は海岸沿いを南下して高知入りすることだった。
早速、その道中で立ち寄れない20番、21番札所は飛ばすことにした。
22番札所・平等寺は厄除けで有名だ。
その厄除けの方法は少し変わっていて(?)、本堂への階段を小銭を落としながら上がるといいとされているらしい。
また、このあたりはお接待の文化が盛んなようで、納経所ではお茶とミカンをいただくことができた。
平等寺を出てからは、しばらく田園風景を楽しみながら南下した。
突如として始まる山道に辟易しながらも、そういうときは景色を楽しんだ。
旅初心者と言えど、さすがに一週間もすると、そういった余裕が出てきた。
写真は、山の中にぽつりとあったカフェ。
営業しておらず話を伺えなかったのが残念だったが、全てがオシャレかつ男心をくすぐる店構えだ。
ディズニーやジブリのキャラが哲学を語っているのが個人的にツボ。
峠のほうまでやってくると、なんと海賊船が。
昼過ぎになると、休憩所に陣取りお母さんからもらったおにぎりを食べた。
具材の梅が疲れた体には嬉しかった。本当に一生忘れられない恩だ。
峠を越えると、薬王寺に着いた。
この赤い建物、喩祇塔では戒壇巡りが体験できる。
ざっくり説明すると、遮光された真っ暗な塔の中を進むと仏様と対面できるというものだ。
また、塔の二階部分から望む景色はなかなか絶景だった。
参拝・拝観したあとは、この写真からも見える左上の川を渡った、更にその先にある大浜海岸に向かった。
日本の渚100選に選ばれているのも納得の美しい海だった。
その絶景に甘えて「クリスマスのバカやろう!」と海に叫んだのは内緒の話だ。
写真の保存に使っているグーグルフォトがなんかいい感じに加工してくれた。
すぐ近くにあった日和佐うみがめ博物館カレッタにも立ち寄った。
ウミガメにはデカくて怖いイメージがあったのだが、パタパタ泳ぐ姿や勢い余って水槽に頭をぶつけたりする姿はとても可愛かった。
ウミガメの赤ちゃんと触れ合うコーナーもあってオススメなので、大浜海岸に来た際はぜひ立ち寄ってほしい。
そのあとはまたひたすら南下して、宍喰のゲストハウス・Pavilion Surfに泊まった。
ご主人曰く、すぐそばにある宍喰温泉がおすすめだということだったので、そこで一日の疲れを癒すことにした。
10メートル以上はあるのではないかという文字通りの大浴場と薬湯・ひのき風呂などが楽しめる。
2018/12/25 【高知編PART1】クリスマスに廃校水族館でノスタルジーが溢れた話
世間はクリスマスらしいが、僕には微塵も関係のない話だった。
それでも周囲の視線は少し気になって、「今俺のほう見た人、絶対『うわぁ、あの人クリスマスに一人で旅してるよ』って思っただろうな」なんて邪推しては勝手に鬱屈な気持ちになっていた。
しかしながら、「恥ずかしいので、一日宿に引きこもります」というわけにもいかない。
この日の目標は引き続き南下して高知入り、そして室戸岬に行くことだった。
宍喰からは気合を入れて漕がなくても到着できる距離だ。
冬の冷たい潮風を横から受けながら、ゆらゆら走ること数十分。
前輪から破裂音が轟き、シュルシュルシュルとタイヤが悲鳴を上げた。
もう本当に突然のことでクリスマスに対する卑屈な気分なんて吹き飛んでしまった。
ママチャリ時代から数えても初めての経験だったが、すぐにパンクしたとわかった。
それが9時とか朝イチのことだったと思う。
幸いだったのは宍喰付近に自転車屋があったことだ。
旅を始める前にパンク修理の方法は知識として詰め込んできたが、実践経験は無かったので素直にプロを頼ることにした。
電話を掛けると、迎えに来てくれるというのでお言葉に甘えることにした。
というわけで、朝に進んだ分は見事振りだしに戻った。
パンクしたときは「最悪」以外の感想がなかったが、案外悪いことばかりでもなかった。
昨日、宍喰まで来た時は既に辺りが暗くなっていて気付かなかったのだが、こうして戻ることで素敵な風景達と出会うことができたのだ。
その日の出発点・Pavilion Surfに戻ってきたときには11時頃になっていたので、それからは朝の余裕とは打って変わり、やや急ぎがちで自転車を漕いだ。
ただ、パンクしたばかりの自転車でスピードを出すのは少し怖くもあった。
自転車屋さんの修理が信用できないというわけではなく、路面に何が落ちているかわからないという疑心からだ。
釘などが落ちていたとして、スピードを出していなければ事前に見つけて避けることができるが、ある程度スピードが出ていればそうはいかないかもしれない。
だが、どちらにせよ自転車以外の手段はない。自転車に乗る以上はその手の不安とは嫌でも向き合わなければいけない。
ならば考えるだけ無駄と言える。僕は「パンクなんて交通事故みたいなものだし、それはそのときだ」と割り切って、サイクリングを楽しむことにした。
無事に高知入りを果たした後、待避所のような膨らんだ場所に車が数台止まっているのが見えた。
横には大きな岩がそびえ立っている。
気になって調べてみると、夫婦岩というらしい。
とりあえず写真は撮ってきたが、どれが夫でどれが婦かはわからない。
紐で繋がっている二つだろうか。
どうやらまたしても恋人の聖地らしいが、他の観光客は家族連れだったのが救いだった。ていうか、"恋人"同士で"夫婦"岩に行くデート、重いよ。
そして、室戸市にはどうしても行きたい場所があった。
むろと廃校水族館。
その名の通り、廃校になった小学校を再利用している水族館だ。
来場者が10万人を突破したとかで気になっていた。
この水族館の特徴は「学校」としての側面も強く見せていることだ。
教室に跳び箱にそろばん。階段の踊り場にはアート。懐かしい身体測定器たちもあった。
もちろん、水族館としての魅せ方も面白かった。
かつての手洗い場が水槽になっていたり、なまこと触れ合えるコーナーなどは特に面白かった(写真を撮り忘れるくらい)。
ふてぶてしい表情のウミガメ。
エイ。
デカい。
見たとき謎のシンパシーに襲われた剥製。
室戸市は剥製も有名らしく、数々の剥製が並んでいたのだが、その流れで現れたコレには笑ってしまった。
25mプールも活用されていて、サメやウミガメなど多様な水生生物が泳いでいた。
今でも十分すぎるほど楽しめる水族館だが、これからも進化していくらしい。
漁師町であることを活かして、家庭科室での料理体験を計画中なのだそう。
本当に楽しかったのだが、明るいうちに室戸岬に行きたかったので一通り見て回ると下校することにした。
先生の話によると、高知市の坂本龍馬像と向き合うように立っているとかいないとか。
何故かこのときの達成感がベストで、実際に室戸岬を前にすると然程感動しなかったのを覚えている。
「こんなもんか」と舐めたことを思っていたと思う。
たぶん、日本八景という先入観が強すぎたのだと思う。
次の二枚が件の室戸岬だ。
脇の道を歩いていると、アコウという天然記念物にも指定されているバケモノみたいな樹々があった。
ここまでくると、逆に神々しい。生命力の神秘だ。
そのあとは恋人たちで賑わっているであろう室戸岬灯台は避け、逃げるように次の目的地・最御埼寺へ向かった。
帰りの坂から見える景色はすごく綺麗で、夕陽なんて人生史上一番だった。
恋人なんていなくても、これで十分だ。
晩はニューサンパレスむろとという宿を取っていた。
予約時、他に空き部屋がないという理由で、特別室という一般室の倍近い値段がする部屋を一般室料金で使わせてもらうことになっていた。
室内はこんな感じでメチャクチャ広く、おかげでリラックスできた。
本当に恵まれているクリスマスだった。
(続く)