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旅も自転車もド素人なのに四国一周した話(8)

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2018/12/30【二度目の徳島編PART3】リベンジマッチを挑んだ話

 徳島の朝焼け時はガス灯が点いていてエモい。

 

 その中、数十キロある荷物を引きずるようにして徳島駅へ向かった。

 『色づく』の最終回を観るという目的を達成したら、もう徳島に留まっている必要はない。高知に戻るのだ。

 

 高速バスが来るまでの間、バスターミナルの待合室で暖を取ることにした。

 日本で年越しする外国人は結構いるようで、居合わせた人の半分は外国人だったと思う。

 彼らが大きなキャリーケースを引いていたおかげで、幾分僕の大きな荷物が目立たなかった。

 

 乗車予定の便は朝一番。

 深夜放送の『色づく』を観たあと、僕は寝坊が怖くて一睡もしていなかった。

 そのせいで、バスに乗ったあとは一瞬で気を失った。

 

かずら橋 

 この日、僕が早朝から行動していたのは観光する時間を十分に確保するためだ。

 そして、その観光地というのは大歩危駅の付近、言い換えれば辺境の地にある。

 

 それが、かの有名なかずら橋だ。

 ちなみに、ここは徳島の観光スポットだが、最寄りの大歩危駅へは高知からのほうがアクセスがいい。

 

 僕は高知駅まで戻ると、その足で電車に乗った。

 先ほども書いたように辺境の地にある観光地なので、自転車で行くという考えは毛頭なかった。

  高知に帰る途中で立ち寄るという方法もあったが、荷物をコインロッカーに預けたかったので一度高知駅に戻ることにした。

 

 山中を走る普通電車に乗ること2時間。

 大歩危駅に着いた頃には昼になっていたと思う。

 

 かずら橋へ行くには、そこからまた30分ほどバスに乗らなくてはならない。

 ただ、車窓から見える景色が良かったので退屈はしなかった。

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 「かずら橋夢舞台」というバス停留所で降りると、驚いたことに雪が積もっていた。

 それも結構な量。上を歩くと、ザクザクと音が鳴るレベル。

 おそらく28日に降った雪が残っていたのだ。

 

 このことが何を意味しているかというと……、とにかく寒い寒い。

 少しでも体を温めたいと、せめてもの足掻きでスタスタ歩いた。

 自分の白息が顔に当たるような早歩きで、家族連れの観光客を追い越していく。

 

 やがて見えてきたのは、45メートルもある大きな橋と、かつての僕のように一歩一歩ぎこちなく歩く人々の姿。

 ちなみにかつての僕はこちら。

 ブラックコーヒーのような苦い思い出付き。

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 言ってしまえば、今回はリベンジマッチでもあった。

 こちらのかずら橋は高さも長さも前回の比ではない。

 目の前にすると、その威厳を感じられた。

 

 ただ、「意外と歩きやすそうだ」と思ったのも事実だ。

 というか、実際に歩きやすかった。

 なぜって、足場の間隔が狭く、足を踏み外したり物を落としたりするリスクが少ないのだ。 

 

 だから、リベンジマッチと意気込んでいたわりに、全く怖くなく、3分弱で渡り切ったと思う。

 それも周りの観光客に配慮しながらのことなので、僕一人ならタイムアタックで6秒切れる。それは嘘。

 

 鮮明に記憶に残っているのは橋云々というより、下を流れるエメラルドグリーンの祖谷川だ。

 橋の上から川の底が見えるくらい不純物がないのだから、本当に綺麗な川だ。

 

 ちなみに、祖谷の更に奥地には二重かずら橋と呼ばれる、より大きな橋があるのだが、そこへ行くバスは冬季は運営していないとのことで断念した。

 

大歩危峡観光遊覧船

 大歩危駅~かずら橋間のバス運行本数は少ない。逆もまた然り。

 次の便までは1時間以上待たなくてはいけなかった。

 僕は時間を節約するため別の路線が合流する停留所まで1キロほど歩いて、そこから大歩危駅まで戻った。

 

 時間を気にしていたのは、大歩危峡観光遊覧船に乗りたかったからだ。

 大歩危峡を流れる川を船で下り、含礫片岩と呼ばれる天然記念物を間近に見ることができる。

www.mannaka.co.jp

 

 レストランの中に受付があり、その脇の通路を下っていくと船乗り場が見えてきた。

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 救命胴衣を着用するよう言われ、準備が済むとひざ掛けを渡してくれた。

 雪も解けない気温&川の上というシチュエーションだったので、とても助かった。

 が、それでも耐えられないくらい寒かったので、禁断の上着二枚重ねに手を染めてしまった。

 

 船から見える景色はこちら。

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 船頭さんから、二、三説明は入るのだが、基本的には静かに川を遊覧するだけ。

 自由度が高いのはいいことだと思う。

 他の観光客はキャーキャーしていたが、僕は黙々とシャッターを切っていた。

 

 こちらが国指定天然記念物の含礫片岩。

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 ちなみに、大歩危全体はこんな感じ。

 遊覧せずとも、この風景を見るためだけに訪れるのもアリだろう。壮大。

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 正直、遊覧の途中で雨が降ってきたせいで「とにかく寒かった」という思い出が強く、感想も上書きされてしまっている。

 次訪れるときは夏にしようと思う。

 

 高知駅へ戻ると、夜は高知名物・鍋焼きラーメンを食べた。

 濃い目の鳥のスープが食欲をかきたて、ごはんが進む料理だ。 

 ちなみに、ごはんは並で1合というボリューム。

 

 

2018/12/31【高知編PART4】最悪だった大晦日の話

 大晦日、この日は朝から胸騒ぎがしていた。

 

 というのも、僕は3日間も自転車に乗っていなかったのだ。

 その間、自転車はずっと高知駅無人無料駐輪場に預けていた。

 (※利用規約上、7日間までは自転車を置いていいことになっている。)

 

 ここは無人無料で利用しやすい反面、自転車に何が起きても自己責任ということになっている。

 

 そして昨夜、以前も利用した駐輪場のないネカフェに向かう途中、酒に酔って悪騒ぎする連中と何度かすれ違った。

 それだけで治安が悪いとは言わないし、彼らも年の瀬で楽しくなっていただけだと思うが、安心できない街だと思ったのは確かだ。

 

 だからというわけではないが、「自己責任」という言葉は夜を過ごすうちに自分の中でどんどん大きくなっていった。

 

 とにかく僕は早朝の高知市を小走りで駆けた。

 重たい荷物がスネに何度もぶつかったが、関係なかった。

 

 駐輪場に到着。自転車の存在を確認。そっと胸を撫でおろした。

 ところが、安堵したのも束の間。

 違和感を感じたのは、自転車をレーンから引き出したときだ。

 

 タイヤが上手く回らない。

 

 ロックは外したし、積み込んだ荷物が引っかかっているという様子もなかった。

 原因がわからず何となく下を見ると、後輪のタイヤが凹んでいた。

 

 でも、預ける前は十分に空気が入っていたし、寒さでチューブがパンクするという話も聞いたことがない。

 もしパンクだとしても空気が漏れている場所を探さなくてはならない。

 

 タイヤを凝視すると、すぐに原因がわかった。

 一箇所、中のチューブが見えるほど大きく裂かれていた。

 

 もう絶望である。

 ただのパンクなら、一度プロの修理を見ているし、自分で修理することができた。

 でも、切り裂かれたとなると修理できる傷ではないし、そもそもタイヤから交換しなくてはならない。

 

 しかも、このときは早朝の大晦日だ。完全にお手上げ。

 息以上に頭が真っ白になってしまった。

 カフェが営業している時間ではなかったし、とりあえず駅構内の休憩スペースに向かった。

 

 不幸中の幸いというべきか、高知市にはそこそこの数の自転車屋がある。

 ただ調べる限り、どこもホームページがなく、年末年始に営業しているかどうかがわからなかった。

 

 常識的な時間になるまで待ってから、電話を掛けることにした。

 両足をこすり合わせながら待つこと3時間半。

 途中で構内のカフェが営業を始めたが、修理費が想像できなかったので、結局利用することはなかった。

 

 1件目、繋がらなかった。2件目、3件目も。

 それはそうだ、大晦日なのだから仕方ない。恨むべきはタイヤを裂いた切り裂きジャックだ。

 

「そもそも、なぜ僕だったのだ。

 確かに3日間も放置した不用心は認めるが、それ自体は規約上問題のない行為だし、他にもルール違反はなかった。

 もしかして理由はないのか?

 年末の浮かれ気分でやったとか? ロードバイクに恨みがあった?

 ……理由がどうであれ、タイヤを切り裂けるようなナイフを持ち歩いている人がいる地域、ヤバすぎ。

 そんな治安の悪い場所だとは思わなかった。もう高知には来ない」

 

 そうやって考えても仕方のないことを考え、やり場のない憎悪を高知にぶつけた。

 

 半ば諦め、正月三が日をネカフェで漫画を読みながら過ごすという廃人ルートを模索し始めていた。

 「あの漫画の続き気になるなぁ」と思いながら、四件目に電話を掛けた。

 

 繋がったときは、自分でも心底驚いた。

 急に漫画のことなど、どうでもよくなった。

 

 4件目の猫家サイクル 山本さんは事情を説明すると、修理を快く引き受けてくれた。

 

 大晦日であるにもかかわらず、仏だ。

 猫家サイクル 山本さんは、高知駅南口正面の幹線道路を真っすぐ1キロほど歩いて、鏡川を渡ったところにある。

 

 問題があるのは後輪なので荷物を積むことができず、観光でもないのにコインロッカーに預けた。

 そして、荷台を持ち上げるようにして車体を持ち、店へと向かった。

 

 ご主人は「災難やったなぁ」と明るく迎えてくれた。

 僕は大晦日に厄介事を持ち込んだ災難を謝罪、そして感謝しつつ、内心で仮想の切り裂きジャックをシバき回した。

 

 修理はあっという間に終わった。やっぱりプロはすごい。

 気になる費用は7000円。

 

 うっかりしていて、手持ちでは足りなかった。

 僕が「急いで近くのATMまで行ってきます」と言うと、ご主人は修理を終えたばかりの自転車を指して「乗ってったらいい。信用してるから」と言ってくれた。

 

 基本的に地元の人はすごく親切で優しい。でも、一部の人間のせいで、地域全体が悪く見える。

 いつだってどこだって、そうだ。現代じゃなくても高知じゃなくても。

 

 ……いや、僕がお金を払うのが当然みたいになっているが、そもそも泣き寝入りなんて絶対におかしい。

 

 警察が動いてくれないのは論理的に考えてわかるし理解できる。

 だったら、百歩譲ってタイヤを裂かれるのは我慢しよう。

 その代わり、犯人は「タイヤ裂いたらスッキリしました。ありがとうございます」って一筆添えて修理費を置いていけ、マジで。

 

五台山公園 

 そんなこんなで始まった僕の大晦日

 最初に向かったのは五台山公園。

 

 徳島の眉山同様に、市内を一望できる夜景が綺麗なスポットだ。

 だが、夜に山を登るのは御免だったので、朝に訪れた。

 

 見れば分かるが、朝でも十分綺麗だ。

 眼下に切り裂きジャックを捉えているかもしれないと思うと気が気じゃなかったが。

 

第32番札所・禅師峰寺

 この日は合計で4箇所ほど寺院を巡った。

 

 その内、禅師峰寺では面白いものを見ることができた。

 この写真の岩に溜まる水は潮の満干によって増減するという。

 説明が「~~言われてきました」で終わっているので、本当かどうかはわからないが、もしそうなら、この岩は海と繋がっているのかもしれない。

 次に訪れることがあれば、2枚目と見比べようと思う。

 

桂浜

 そのあとは桂浜に向かうべく市内を南下した。

 道中渡った浦戸大橋は勾配がきつい・路側帯が狭い・歩道も狭い・全長がそこそこ長いの四拍子が揃っていて、僕のように自転車に荷物を大量に積んだ自転車が走る道ではないと感じた。

 

 追い越し自動車に気を使われていると感じたので、上りの途中で自転車を降りたが、橋の上でぽつんと一人歩く自分が酷く惨めに思えた。

 

 浦戸大橋を渡ると、桂浜までの道を示した標識が出ている。

 それに従い進むと、今度は山道が始まり、それを越えると駐車場が見えてきた。

 自動車・バイクは有料だが、自転車は無料だ。

 

 駐車場が広すぎて、どこから桂浜に行けるかイマイチわからず、なんとなく観光客の列に続いた。

 

 ちょっとした階段を上るとあったのが、坂本龍馬像。

 先生の話を思い出した。

 噂によると、室戸岬中岡慎太郎像と向き合うように立っているらしい。ただし、真相は不明。

 

 龍馬像の横からは桂浜を見下ろすことができる。

 天気が悪くて残念だ。

 

 そのあと食べたのは、龍馬ラーメン。

 わかめラーメンにカツオ・エビ・山菜といった、この辺りで有名な食材が乗っている具沢山のラーメンだ。

 カツオの出汁を使ったスープなんて初めて聞いたが、意外とマッチしていて美味しかった。

(続く)