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旅も自転車もド素人なのに四国一周した話(9)

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2019/01/01【愛媛編PART1】はじめて輪行した話

 年明けは意外とあっさりしていた。

 少し時を遡って……実を言うと、大晦日はまだ高知市内にいた。

 

 昨日の一件で高知駅前に滞在するのは抵抗があったので、夜は高知市の外れにあるネカフェを利用した。

 今思えば、年越しがネカフェなんて本当にくすんだ人生だと思うのだが、このときは完全に「住めば都」精神だった。住んではいなかったけれど。

 居場所があるだけでありがたい。

 

 それに、ネカフェは存外快適だ。

 想像に易いと思うが、この日は利用客が極端に少なかった。

 これまでネカフェを利用する夜はどこからともなく聴こえてくるイビキに悩まされたせいで、ネカフェに対する印象も良くなかったが、改めて考えるとサービス内容に関しては文句の付けようがない。

 

 男が横になってくつろげるスペース、パソコン(テレビ&映像作品見放題)、快適回線、漫画&雑誌、ソフト&ホットドリンク、アイスクリーム、店によっては朝食セルフ食べ放題。

 確かに清潔感に関しては難ありの店もあるが、これだけのサービスを一晩2000円少々で受けられるのだから、そこに文句を付けるのはクレームと同義だとすら思える。

 

 話を戻して。

 この日は誰かの寝息のようなものは聞こえてきたが、 ネカフェ史上最高に静かな夜だった。

 だから、時間を忘れて漫画を読みふけっていた。

 で、気付いた頃には年が明けていた。

 

 締まらないが、僕はこうしてネカフェから2019年をスタートさせた。

 

 このネカフェは朝倉駅の真横にある。

 元旦の朝、僕はこの駅の前で輪行の準備に取り組んでいた。

 輪行とは、公共交通機関に乗るためにスポーツサイクルを解体して袋に収納することである。

 

 僕は輪行して、朝倉駅から宇和島駅までショートカットすることを考えた。

 具体的には、高知市より南を全て省き愛媛入りするという流れだ。

 

 理由はいくつかある。

・タイヤ切り裂き事件から、高知に留まっていることに不安を覚えたこと

・正月を都市部で過ごしたかったため高知市から南下した場合、もしまた予想外のトラブルに遭遇したら、正月ということもあって次は対処できるかわからなかった)

・徳島に戻る高速バス代、そして修理費用、そういった予想外の出費がかさんだため

 

 つまり、完全に切り裂きジャックのせいだ。

 徳島に戻ったのは僕がオタクだったせいだけれど。

 

 というわけで、僕は初めての輪行に挑むことになった。

 ネカフェにいる間にYouTubeで勉強していたので、40分くらいかかったが、特に迷うことなく輪行することができた。

 

 ただ、厄介なのはそこからだ。

 数十キロある荷物に自転車がプラスされるのだ。

 バラしてコンパクトになっているとは言え、腐っても自転車。

 重たいのは重たいし、当然かさばる。

 

 僕の見た目は完全に不審者だった。

 背中に大きなリュックサック、腰にはウエストバッグ、右肩には輪行袋、左手には今まで両手に分けて持っていた全ての荷物。

 そんな装備の男がフラフラと駅に迷い込んでいく。

 

 かろうじて救いだったのは、乗客が少なかったことだ。

 大阪の電車にこの装備で乗れば最後、降りるその時まで周囲の人は眉をひそめ迷惑そうな視線を向けてくるだろう。

 いや、乗客の多い少ないは関係のない話だったかもしれない。

 

 人柄、そして土地柄なのかもしれない。

 

 そう思ったのは、電車に乗ったときだ。

 当たり前だが、輪行する際は邪魔にならないスペースに乗るのがマナー。

 僕が乗ったのはワンマン列車だったので、運転手席の横にくぼみのようなスペースがあった。

 残念ながら、そこには先客のイマドキ女子が立っていたのだが、彼女は僕を見るなりスペースを譲ってくれたのだ。

 

 本当に助かった。

 やっぱり切り裂きジャックみたいな一部の人間が目立つだけで、良い人は本当にたくさんいる。

 

 乗車駅の朝倉から目的地の宇和島までは一度乗り換えを挟む。

 乗り換えには1時間以上も余裕があったので、僕は焦ることなく、生まれたての小鹿のような足取りで次のホームを目指した。

 

かっぱうようよ号

 僕の目の前に現れたのは通称・かっぱうようよ号。

 名前の通り、河童がたくさんいる列車だ。

 

 何を言っているかわからないと思うが、とりあえず写真を見てほしい。

 何度見ても河童しかいないのだ。ホビートレインというらしい。

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 乗り換えの待ち時間を含めると、合計で5時間ほど移動にかかった。

 

 目的の宇和島駅に着いた頃には16時頃だったと思う。

 駅前で自転車を組み立てていると、一人のおじさんが声をかけてきた。

 

 どんなところを巡ってきたのかなど、世間話をいくつか交わしていると、おじさんは「お礼だ」と言って、一杯のコーヒーをご馳走してくれた。

 高知で酷い目に遭ったばかりだったので、最高に嬉しかった。

 

宇和島オリエンタルホテル 

 自転車を組み立て終えた頃には日が傾きかけていた。

 移動したり観光するには遅すぎる時間だったので、この日の宿・宇和島オリエンタルホテルへと向かった。

 

 サイクリストを応援しているホテルで、温かい歓迎、複数の入浴剤、フリードリンクなどが備えられている。

 フリードリンクには、愛媛産のミカンを使ったオレンジジュースもあった。

 本場のオレンジジュースは少し苦味があって、奥行きが楽しい味だったことを覚えている。

www.oriental-web.co.jp

 

 

2019/01/02【愛媛編PART2】年に5回しか開催されない闘牛大会に行った話

 この日は丸一日、観光に充てた。

 もちろん、宇和島到着当初はそのつもりはなかった。

 振り返ると、時間もお金も結構使っていたし、だからこそ輪行したという部分も否めなかった。

 輪行という「ずる」をする代わりに、翌日からは寄り道せずにどんどん前に進もうと思っていた。

 

 ……のだが、1月2日が年に5回しか開催されない闘牛大会の日となれば、話は別だ。

 そのことを知ったのはオリエンタルホテルのフロントにあった張り紙だ。

 

 闘牛の開始時刻は12時、終了時刻は14時と微妙なスケジュールだったので、思い切って一日観光に充てることにしたのだ。

 形だけでも初詣をしておきたかったし、ちょうど良かった。

 それに、寄れるなら寄っておきたいというスポットもあった。

 

和霊神社和霊公園

 最初に訪れたのは和霊神社

 この石造りの大鳥居は日本一の大きさらしい。

 

 また一日出費がかさむのだからと、出店の匂いを我慢しつつの初詣となった。

 せっかくなので、おみくじも引いてきたが、結果は「吉」と可もなく不可もなくという運勢。

 ただ、生憎と僕は普通であることが一番幸せだと思う人間なので、僕的には大吉の価値があった。

 

 和霊神社の横には和霊公園がある。

 とても広い公園で遊具も豊富なので、参拝帰りの子どもたちが元気に駆けまわっていた。

 そして、この公園には異様な存在感を放つものが一つ。

 

 SL、蒸気機関車だ。

 

 ちなみに、運転室に入ることもできる。

 僕は鉄道の類は全く興味がないのだが、スチームパンクは好きなので興奮しっぱなしだった。

 

宇和島市営闘牛場

 そのあとは山頂に闘牛場があるという小山に向かった。

 「なぜ四国の名所は全て高い場所にあるのだろうか、猫でもあるまいし」なんて他愛もないことを考えながら――そうしていないと辟易してしまうからなのだが――、山頂に辿り着いた。

 宇和島市営闘牛場だ。

www.tougyu.com

 

 程よい場所に駐輪すると、またしても一人のおじさんが話しかけてきた。

 僕より何回りも人生の先輩のはずだが、ものすごく腰が低い方でロードバイクに興味があるようだった。

 初心者なりにロードバイクのことを教えてあげると、おじさんは満足したように去っていった。

 昨日のおじさんもそうだが、愛媛の人はただ優しいだけじゃなくフレンドリーだと実感した。

 

 そして、受付を済ませたのが11時半。

 全席自由席とのことだったので早めに着いたが、意外と余裕があった。

 

 円形競技場は漫画で見るようなコロシアムそっくりだ。

 

 牛さんの顔見せ。

 マーキングだろうか、出てきた闘牛は土に顔をこすりつけるとまた控えに戻っていく。

 その動作は可愛らしいのだが、どの闘牛も目が血走っていて、しかもラッパのような鳴き声を響かせるので、迫力が凄まじかった。

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 そして、試合開始。

 

 宇和島の闘牛は闘牛VS人ではなく、闘牛VS闘牛だ。

 各闘牛は相撲のように横綱から前頭まで位分けがされており、同位のものと戦うことになっている。

 二頭が頭をぶつけたら試合開始で、どちらかが逃げ出すまで試合は続く。

 基本的には数分以内に決着が着くのだが、中には20分弱こう着している組み合わせもあった。

 

 とにかく観客席まで圧が飛んできそうな激しい試合が2時間続いた。

 写真では伝わらないのが残念だ。

 

 トレーナーの方ががっつり映っているので、あまり枚数は載せないが、こんな感じ。

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天赦園

 次に訪れたのは天赦園。

 伊達政宗ゆかりの場所で、数々の緑に囲まれた庭園を散策できる。

www.uwajima.org

 

 ピークはとうに過ぎていたので優先度は高くなかったが、結果的に来てよかった。

 季節関係なくメチャクチャ綺麗だ。  

 闘牛の熱とは打って変わり、穏やかなときを過ごすことができた。

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(続く)